2022年2月15日火曜日

設立趣旨

 成熟社会におけるローカル・ガバナンスの地理学研究グループ設立の趣旨

現在少子高齢化やグローバル化の進展,財政の逼迫化,社会的ニーズの多様化などに代表される成熟社会への移行を背景に,地方自治の形態は変化しつつある.こうした中,住民・行政・企業等の様々な主体間でのネットワーク構築,および参加と対話を通じて公共を担うローカル・ガバナンスの概念が普及し,様々な取り組みが探求されている.

日本では,1990年代末以降地方制度改革が進められてきたが,現在総務省の自治体戦略2040構想研究会報告書にも示されるように,圏域を単位とした行財政運営や二層性政府の柔軟化といった地方制度の再編が模索されている.その一方で,地方自治においては少子高齢化や人口減少が大都市圏と地方圏で地域差を伴いながら進行する中,福祉や公共サービス,社会基盤整備のみならず,災害対応や環境,地域経済,まちづくり等,多岐な分野に跨る社会的課題が出現し,地域に根差した解決のあり方が問われている.

このような政治的・社会的背景の下,今後のローカル・ガバナンスのあり方を展望する上でも,根拠に基づいた議論が不可欠となる.特に地理的枠組みの再編や,地域差を伴って発生する社会的諸課題に柔軟に応えるローカル・ガバナンスの将来像を描く上で,理論的・実証的な研究を行う地理学が今後益々重要な役割を果たし,その貢献が期待される.

そのため,地理学においても政治,社会,経済,あるいは都市・農村など様々な領域を専門とする者同士の情報交換や討議によってローカル・ガバナンスに関する研究を深化させ,社会に発信することが不可欠となる.また,ローカル・ガバナンスに取り組む地理学の研究者には,海外の研究者や他分野の研究者,実務家との国際的・学際的な交流や対話を通じて,将来の地方自治のあり方を展望していくことが求められる.

以上を踏まえて,本研究グループは前身となる研究グループ(地方行財政の地理研究グループ,「新しい公共」の地理学研究グループ)の活動を継承しつつ,

(1)     地域社会や地方自治の問題に関心をもつ国内外の地理学研究者に対し,実務家や他分野の研究者も交えながら議論や情報交換する場を提供し,ローカル・ガバナンスに関する研究の深化と発展を図る.

(2)     様々な地域や分野で展開されているローカル・ガバナンスについて,他分野や国内外の研究動向を踏まえつつ,参加する研究者の問題意識や関心に応じて地理学的な視角から理論的・実証的研究を進めると共に,統合的な研究成果の発信を目指す.

(3)     実務家等との連携や共同を図ることで,研究により得られた成果や知見を,地理学的観点から社会的還元や発信を図る.

を主たる目的として設立する.なお本研究グループでの成果は,シンポジウムや刊行物での公表はもとより,実践を通じて社会的な還元を図ることも企図したい.

【発起人】

杉浦真一郎(名城大学都市情報学部・教授)

栗島英明(芝浦工業大学建築学部・教授)

美谷 薫(福岡県立大学人間社会学部・准教授)

畠山輝雄(鳴門教育大学大学院学校教育研究科・准教授)

前田洋介(新潟大学教育学部・准教授)

佐藤正志(静岡大学教育学部・准教授) …代表者

久井情在(国立社会保障・人口問題研究所・研究員)